【台湾山旅】〈本編〉南湖大山からのおもてなし

台湾

南湖大山登山の本編。
旅を通して台湾の自然と人の優しさに触れることができた。汗と酒にまみれた南湖大山の山旅記録を残していきます。
<文/写真:Yuki Fujimura>

day0 #prologue


南湖大山の登山情報は2017年当時あまり無く、山と道JOURNALや当時数少ないblogを参考にしながら、少し余裕を持った3泊4日の行程を立てた。現地で購入した地図をもとにおこした簡易マップを参考に載せておく。

AM6時
早朝のフライトに向けてタクシーで羽田空港へ向かう。
出国手続きを終え搭乗待ち、これから始まる旅にワクワクする一番好きな時間。気持ちを高めつつ、しばらく食べれなくなる日本食が急に恋しくなり、罪悪感たっぷりの早朝六厘舎つけ麺をカマすことにした。



………なかなか頼んだ麺が来ない。



フライトまでの時間が迫る、気持ちも焦る。
搭乗のアナウンスが始まり、これまでか、、、と思い六厘舎のおばちゃんにつけ麺三つをプレゼントしようとした時、ギリギリでつけ麺が出てくる。搭乗時間のプレッシャーを受けながら3分でつけ麺を食べ切り、無事飛行機へ登場し台北へ向かった。

台北に到着。
 

AM10時
台湾に到着。
とにかく蒸し暑く、そして眠い。今日は南湖大山の玄関口である宜蘭(イーラン)まで行く必要があるため、登山物資を速やかに調達して宜蘭に向かい、翌日からの登山に備えて休息を取ることが求められる。まずは台北で登山ショップを探す。

你好
 



………気が付くと鼎泰豊で小籠包を頼み、麦酒で乾杯していた。



朝の六厘舎が完全に胃の中で消化されたため、美味い飯と景気付けの台湾麦酒で舌鼓を打つことにした。飯、山を全て楽しむことも、この山旅に求められる重要事項であることを忘れていた。


良い感じに腹も満たされ、改めて登山ショップを探す。台北駅付近には『準備編』で紹介した”登山友”以外にもたくさんの登山ショップがあり、大半の必要物資を揃えることができる。地図とOD缶を購入し、高速バスで宜蘭へ向かう。台北から宜蘭は1時間半程度の道のりだが、車内はWi-Fiが完備されており快適なバス旅だった。

 登山友の隣にある台北山水で物資調達、雰囲気が最高。
 

PM5時
ホテルにチェックインし、散策のため宜蘭の街に出る。漂う「ローカル感」に探索欲がそそられる。


まずはスーパーマーケット。
翌日からの登山に向け日本から持ち込んだ食料以外に米、バナナ、菓子、酒などを調達。食料は台北ではなく宜蘭で問題なく調達可能。関係ないけど海外のスーパーマーケットはなぜかテンションが上がる。


次に夜市。
台湾を楽しむ上で夜市の存在は欠かせないと思うが、宜蘭には「羅東夜市」があり規模が小さいものの台湾のローカルフードをしっかり揃えている。何より活気があって台北の大きな夜市より個人的には好みだった。台湾classicと夜市の飯で台湾初日の夜を終えた。

羅東夜市は田舎の祭りのような規模感で心地が良い。
 

day1 #藪漕ぎ


AM7時

天気は快晴。
登山口の思源啞口に向かうため梨山行きのバスに乗る。バスで1時間半の移動となるが、途中休憩時間で小さな商店に寄ってくれるのでリフレッシュができる。商店で買い物していたお母様に話しかけられ雑談、我々が南湖大山へ行くことを知り、煮卵をプレゼントしてくれた。改めて台湾の方は心優しい人が多いと感じる。

宜蘭の街からいざ出発
 


AM11時30分
登山口の思源啞口に到着。
小川沿いの道から登山道に入り、最初のチェックポイントである「6.8k登山口」を目指す。登山道は100m間隔で小さな標識がありとても歩きやすい。


ところが…………急に道に迷う。


気づいたら道はなくなり、藪を漕ぎながら歩いていた。

標識を意識しながら歩いていたので迷う可能性は限りなくゼロに近いのだが、どこかで道を外れてしまったのだろう。

ただ道迷いなのか、これが台湾の登山道なのか判断がつかずしばらく萎えながら進んでいると、2mほどの小さな崖の下に綺麗な登山道を見つける。

藪漕ぎなわけないよねー。。。と一安心しつつ、崖を降りて登山道に戻った。

南湖大山の熱い”おもてなし”(ただの道迷い)を受けた。

登山口の思源啞口。ここから6.8k登山口へ向かう。
 

標高2,000m前後、南アルプスのような力強い原生林が残る。
 

 6.8k登山口の標識を発見、ここまでで文字通り6.8km。
 

同じ行程を行く台湾の登山者と挨拶、振舞われる”暖かい”お茶が芯まで沁みる。
 

PM6時
本日の宿泊地である雲稜山荘に到着。
小屋の中はシンプルな作りで、調理場とベッドが用意されている。水場はなくトイレは簡易的な場所が用意されているのみである。

道中に出会った台湾おじさん3人組(以降、台湾おじさんズ)は小屋、我々はテントで宿泊した。台湾おじさんズは写真が趣味でプロ写真家なのではないかと思ってしまうほどのレベルだった。北海道で撮ったという雪上の鷹の写真は額に入れて飾りたいほど迫力があった。とてつもなく写真を撮るのが上手ということが分かったので、明日の南湖山荘で星空の写真撮影を教えてもらう約束をし、就寝した。

 乾杯は台湾麦酒。
 

 雲稜山荘とテント場。台湾三尖に選ばれている中央尖山(3,705m)もうっすら見える。
 

day2 #獣の襲来


AM9:00

空は快晴。雲稜山荘は標高約2,600mで、ここから次のポイントである約3,100mの審馬陣山まで500mの急登を登る。この急登は緩やかな南湖大山の登山道の中で1番辛いポイントだった。

森林限界を迎えるまでが勝負。
 

 急登を抜けると稜線へ。
 

審馬陣山(3,141m)は特に景観なし。
 

少しずつ視界が開け始めると、3,000m級の山たちが姿を現す。とても山深く入ってきたことを実感する。
 

南湖北山へ向かう長い稜線、この稜線がとても気持ちが良い。
 

PM2:00
南湖北山(3,536m)に到着。
雲稜山荘から南湖山荘までは水場が無く、暑さで少しバテ始める。それでも異国感漂う稜線歩きは楽しく、勾配も緩やかではあるため力を振り絞って最後のカール地形を降り南湖山荘へ向かう。

朽ちて変形した木が至る所にある。台湾の書籍にも載っているシンボリックな存在。
 

切り立つ鎖場のような場所も一部ある。こういった場所は稀で、基本的には安全な登山道が続く。
 

南湖大山のカール地形に入る。ポツリとあるのが南湖山荘。
 

PM4:00
南湖山荘に到着。
テン場は貸切で、地形もフラットなのでどこでも設営可能な状態。山荘の裏には小川があり、煮沸すれば飲み水に使うこともできた。

11月はわずかだが水が残っていた。訪れる前に状況は確認した方が良い。
 

PM7:00
夜になると、今までで経験したことのないほどの星空に囲まれた。台湾classicを飲みながら台湾の夜空を満喫し、テントで就寝した。




………しかし!!




テントの外には野生動物の気配。
足音を聞く限り複数匹、しかも囲まれている。

これはマズイと不安な状態で過ごしていると、「ガサガサッ!!」と音がし隣のテントに小動物が突っ込む。心臓バクバクの状態でなかなか寝つけないスリリングな夜となった。南湖大山の懐深い“おもてなし”だった。

星空のおもてなしを受ける。

day3 #登頂


AM5:00

起床。
昨日の野生動物の手厚いおもてなしもあり瞼が重い。テントから外を見ると、うっすら明るくなり始めているが転記は快晴の様子。事前に雨予報があったものの、全日快晴に好転してくれたことは本当にありがたい。コーンポタージュとパンで軽く腹ごしらえをして山頂を目指す。

AM8:00
山頂直下にはだだっ広い台地があり、東峰との分岐となっている。ここで御来光を拝み、山荘出発から2時間弱で南湖大山に登頂。山頂は誰もおらず、朝の静寂と絶景が迎え入れてくれる。

山頂からは、台湾五岳で二番目に標高が高い”雪山”(Xueshan 3,886m)、台湾の槍ヶ岳(?)こと”中央尖山”(Mount Chung Yang 3,703m)を望むことができ、360℃の展望だった。

雲海の中から朝日が昇る。
 

いざ南湖大山へ。
 

中央に見えるのが中央尖山。縦走欲がそそられる。
 

奥に見えるのが雪山、360℃の展望は素晴らしいものだった。
 

day4 #下山


雲稜山荘で一泊し、早朝に山荘を出発し思源啞口まで下山した。
台湾おじさんズに写真を教えてもらったのだろうか?と覚えてくれている人はちゃんと読んでくれていてとてもありがたい。


台湾おじさんズは終始自分たちの写真撮影に夢中で、結局写真を教わることはできなかったのだった。

しかし、帰りのバス停で待っている我々の目の前を奇跡的におじさまたちの車が通り過ぎた。写真講座が不発に終わったお詫びなのかただの優しさなのかは不明だが、人数分のリンゴをいただいた。疲れた体にリンゴの甘さと酸が沁みた。

この稜線は素晴らしかった。ずっと続いて欲しいと思いながら歩いた。
 

川でクールダウン、4日間の疲れが癒される。
 

day5 #epilogue


下山後は宜蘭の近くにある小さな温泉街である礁渓温泉へ立ち寄ってみた。
台湾の温泉はどないなもんじゃい!と興味津々で入浴。ぬるめのお湯に浮かぶ無数の「湯の華」を見ながら、日本の温泉のクオリティの高さを噛み締めた。

礁渓温泉のローカル温泉感。
 


その後台北に戻り、台北駅近くにある「登山友」に立ち寄った。
台湾百岳のバンダナを3人でお土産に購入しようとしが、バンダナが二つしかない状況だった。

すると登山友の女将がスクーターを走らせわざわざ姉妹店まで残りの1個を取りに行ってくれた。旅を通して体感した台湾の方々の優しさにはリスペクトしかない。この旅を通じて台湾のことが本当に好きになった。ありがとう台湾、また必ず来ます。

ありがとう台湾。ありがとう”登山友”。
 

パーミットの取得でお世話になった”町・記憶旅店”。
 

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