ハセツネ30k完走のおもひで

トレラン

ハセツネとは、「日本山岳耐久レース(24時間以内)~長谷川恒男CUP」の略である。登りがきつく、細くてテクニカルな70kの道を補給なしかつ24時間で走り抜く、名前の如く「山で生き抜くための耐久力」が試される過酷な大会である。そんなハセツネの入門編であるハセツネ30kに、トレラン初心者のフジムラが挑戦してきた記録である。<文/写真:Yuki Fujimura>

相方に起こる悲劇

2025年11月、ハセツネを走ろうと誘ってきたT.D氏。

ハセツネは、日本でトレイルランがまだ競技として確立されていなかった時代、1993年に初開催された30年以上の歴史を持つレースである。いわばトレイルランの起源とも言える存在で、一度は走ってみたいと憧れていた大会だ。
一方で、ここ1〜2年でトレランを始めたばかり、レース経験も浅い初心者の私にとって、いきなり30km・獲得標高2,300mのハセツネを走り切れるのかという不安もあった。

しかし、ハセツネは単なるトレランレースではない。
急登が多く走れる区間が少ないうえ、エイドもなく、すべてセルフマネジメントが求められる。
これはもはやトレイルランではなく、「マウンテンマラソン」だ。
これまでの山経験で培ってきた力を試す、またとない機会だと思い、T.D氏と参加を決めた。

ところがどっこい
前哨戦として想定していた12月開催の「武田の杜」(30km/獲得標高約1,400m)が、熊の出没により中止。
これでは30kmの感覚を身体に覚えさせることができない。

さらに追い打ちをかけるように、1月の九重遠征でT.D氏が岩場で足を滑らせ、靭帯断裂という大怪我を負ってしまう。

結果、30kmの長距離ランを単独で走ることを余儀なくされた。

立て続けに起こる悲劇。
一方で膨らむ挑戦へのワクワク。
孤独、不安、期待——さまざまな感情に揺さぶられながら、初のハセツネ挑戦が幕を開けた。

事前準備

まずはトレーニングについて

ベースは鎌倉の山を走る「観音レン」(13km/獲得標高約400m)。
約4kmがロード、残り9kmがトレイルというバランスの良いコースだ。

これを約2か月、週1ペースで繰り返し、基礎を作った。

通常の30km程度のレースであれば、これで十分だと思う。
しかしハセツネは急登が多く、獲得標高は2,300m。
登りをハイペースで押し切る“馬力” が必要になると勝手に想定した。

そこで丹沢・馬鹿尾根(13km/獲得標高1,300m)などの山行を追加し、登りの強度も高めていった。

 


続いて持ち物について

ハセツネにはエイドがない。すべて自分で用意する必要がある。

水は1.5L。
補給は「5kmに1回」を目安に、ハンガーノック防止を最優先。
ゼリーやエナジーバー5つ、保険としておにぎりを2つ追加する。


<持ち物>
・POW BAR ×2
・あんDo ×1
・あんこbar 瀬戸内レモン ×1
・mag on ×1
・おにぎり ×2
・水 1.5L
・ウィンドシェル
・ファーストエイド(絆創膏、消毒、包帯)
・目薬

今思えば、ストライドラボでもっと相談しておけばよかったと後悔している。
とはいえ、決して万全とは言えないものの、最低限ハセツネに挑戦できるだけの準備は整った……はずだ。

 

いざハセツネへ

「朝8:00前に秋川渓谷集合」という私にとって非常に大きな”第ゼロ関門”を突破するには、4:30の始発に乗る必要がある。
ここが一番の難所だぜ、、、と気を引き締めていたところ、
なんと当日、T.D氏が応援に駆けつけ、車で送迎までしてくれることになった。
レースは周囲のサポートも非常に重要だ。
応援してくれる人がいるだけで、これほど心強いものはない。

今回は体調管理も万全だ。
5-6時間走るレースで便意を催すことは非常にまずい、お腹のコンディションを良好に保つ必要がある。ということで大会の1週間前から大好きな”さぼてんのメンチカツ”はお預けとし、毎日バナナとR1で腸活をサポート。結果として、レースの朝にBIGなBen DavisのDropに成功、コンディションも良好だぜ!


8:30、ついにスタートの笛がなった。

びっくら渋滞

スタートから約30分。
ロードとトレイルが入り混じる道が続く。ところどころ渋滞はあるものの、安定したペースで軽快に登りを進んでいった。
30kmという距離は自分史上最長。
作戦としては、スタートから10kmまでは一定のペースで心拍を徐々に上げる。10〜20kmが勝負どころで、下りを飛ばしすぎないよう我慢しつつ約400mの登り返しをクリア。残り10kmで一気にスピードを上げる——おそらく誰もが思いつくであろう凡策だ。

YAMAPの記録。11Km地点あたりから一気に400m下り、そこから再度400m程度登り返す。

「これは演習ではない」

というテングラヂオのジャキワードを合言葉に自分を奮い立たせつつも、後半でバテないように程よいペースをコントロールしながら調子良く走れていた。


スタートから4kmほど進み、盆堀川沿いのロードから臼杵山へのトレイルに入る登りに差しかかったとき、異変に気づく。
はるか先のトレイル上まで、人が並んでいる。
びっしりと渋滞が発生していた。
走れない。
いや、それどころか完全に停止している。

中央道ばりの渋滞、体も冷えるし最悪です。

さすがにこれは堪えた。
走りのリズムが完全に崩れ、身体が冷えてしまう不安も募る。
結果的に、この渋滞を抜けるのに1時間弱を要することになる。
このままでは関門を越えられないのではないか。
30kmを走り切れないのではないか。
そんな焦りが頭をよぎり、タイムへの影響も相まってモチベーションがただ下がり。

それでも、これまでの練習や当日のT.D氏のサポートを思い出し、

こんな形でレースを諦めたくない!
タイム云々もはや関係ない!
ここからは「俺のハセツネ」への挑戦じゃい!

と、自分の全力で、後悔のない走りをすることを心に決める。
魚住に大根のかつら剥きを落とされた赤木のように、消えかけた心の燈に火が灯った。
(まだ6k地点)

おにぎりという名の仙豆

臼杵山への登りは道が細く急登で、なかなか抜くことができない。
心拍数を一定に保ちつつ、行列のペースに合わせて淡々と登る。

臼杵山を越え、下りに入る8km地点あたりで、ようやく列がばらけ、走れるようになった。

「よし、ここから勝負だな。」

そう思って走り出した瞬間、右からスッと前に出る影があった。
全身ナイキトレイルに身を包み、超絶なヒラメ筋を誇る。タッパはないが横幅ががっちりした、センターも守れるポイントガード体型の男だ。

どうやら彼も同じことを考えていたらしい。一足先を越された。

「これは演習ではない」

 

再びジャキワード。
超絶ヒラメ筋ナイキトレイル野郎を「ナイキトレイル君」として架空ライバルに設定し、彼に負けないことを一つの目標とし後ろに着いていく。

臼杵山から市道山への尾根道は、木の根が張り出して走りづらい。
皆がペースを落とす中、「ここがチャンスじゃ!」と巧みなステップで根をかわし、ナイキトレイル君の前に出る。

ようやく走れるスペースができてくる。
尾根上は景色も良い。


10km地点を通過し、第一関門・小坂志川との出合いまで一気に駆け下った。
約13km地点の第一関門では、500mlの水が1本支給された。
「あ、水は補給できるんだ」
そう思いつつ、ありがたく受け取る。

林道から市道山への登りは、初心者にとっての難所だ。
時刻は12時を過ぎ、気温は右肩上がり。この暑さが筋疲労をじわじわと加速させる。

さらに、嫌なサイズの石がゴロゴロ転がる作業道。
多くのランナーがスピードダウンしていた。

「登りこそがチャンス!」

ここで一気に十数人を抜く。
しかし、この時点で前腿が吊りかけていた。

5kmごとに行動食は入れていたが、明らかにエネルギー不足を感じる。
ここで緊急でおにぎりを(※軍曹スタイルで)一つ入れることにした。

※ハセツネの初代王者かつアドベンチャーレーサーである「軍曹」こと田中正人氏とOMMですれ違った時に、おにぎりを頬張りながら急登を登りつつパートナーとルートについて会話しているのを目撃した。それ以来おにぎりを食べながら登ることは我々の中で「軍曹スタイル」なのだ。

おにぎりを一口食べた瞬間、血液が一斉に栄養を運び出す感覚があった。
吊りかけていた前腿は即座に落ち着き、エネルギーが満ちてくる。
炭水化物と塩分、効き方が直球すぎる。
おにぎりさんにマジでリスペクトっす。
おにぎりへの感謝の気持ちに包まれながら、市道山への登りをこなした。


感動?のゴールへ

20kmを過ぎると、地図では分かりづらい細かなアップダウンが延々と続く。しかも急登。
正直ここが一番きつい。

ゼリーを入れても回復せず、
「これトレランのルートじゃねぇだろ……」
と毒づきながら、とにかく止まらず歩き続けた。精神的にもかなり追い込まれていた。

細かい急登のアップダウンが複数回続き、心をへし折ってくる。強い気持ちを持つ必要がある。

残り5km。
ふくらはぎの攣りを警戒しながら、下り基調を使って慎重に進んでいると、目の前をあのヒラメ筋が横切った。

忘れていた。
ナイキトレイル君だ。

レースはまだ終わっていない。
気持ちを奮い立たせ、最後の下りを出せる限りの全力で駆け下る。

残り2k地点でロードに出ると、たくさんの人が応援してくれいた。
知らない人でも、応援されるとなんとなく元気が出るのが不思議だ。

最後の1kで再びナイキトレイル君に抜かれ、数十秒差でのゴールとなった。

どうもお疲れ様でした。

記録は6時間38分21秒。
順位は820位/985人。
YAMAPの獲得標高は2,311m。


それだけ登ったにもかかわらず、筋肉痛は思ったほど重くない気がする
こまめな補給で筋分解を抑えながら走れたからだろうか、やはり補給は大事だ。


数日経った今、順位は全然ダメだったが
不思議と次のレースに向けて走りたくなってきている。

ゴールの瞬間の達成感と爽快感。
アラフォーになっても成長し続けられるという自己効力感は結構中毒性がある。

いずれは信越110kmをいけるだろうか。

 

打ち上げは”大船との山”で。ハセツネありがとうございました。

挑戦を支えてくれた道具たち

あんこbar瀬戸内レモン

これはとにかく美味かった。走ってる途中に思わず「おっ!」と声が出た。
あんこの甘みの後に訪れる爽やかなレモンの酸味がうまい。
なんとなくレモンに含まれるクエン酸が疲労感の軽減を促進してくれるっぽい。
行動中も片手で食べやすくトレランにも向いているので、また買ってみようと思う。しまなみ海道の出発地である尾道の老舗和菓子会社【山本屋】で作られたようかん、是非食べてみてください。

公式【あんこBAR】サイクリストやスポーツに!

OMM コアブリーフ

去年のOMM本線で出会ったコアブリーフ。
「ロングトレイルや縦走で股ずれを起こさない。」というフレコミでサイズMを購入してみたが、ストレッチ性が無いためサイズMだと若干小さく、窮屈感があり山に行くときはあまり使っていなかった。しかしトレランとなるとこのジャストフィット感が逆に良い。激しい運動でもピッタリとタイツのように張り付いてくれるので足の上げ下げにおける違和感もなく、コアの特性上蒸れを逃がしつつ停滞時も冷えから守ってくれるので、非常に快適であった。
山用の場合はLサイズ、トレラン用の場合はジャスト目のMサイズがおすすめ。

Core Boxer
軽量アクティブインサレーションボクサー 最も軽量な75g/㎡のPrimaLoft® ACTIVE中綿素材を採用。保温力に優れたCore Boxerは、過酷な気象...

ヒアネス DRY WOOL T-SHIRT2

ウール53%、ポリエステル47%の混合素材。
ポリエステルによる速乾性とメリノウールによる調温防臭効果の両面を持ち、今回のハセツネでも激しいハイクアップで大量に汗をかいたが、休憩中や尾根上で風に吹かれた時も汗冷え感を感じずらく結構調子が良かった。ただ、ポリが含まれているため走り終わった後に汗シミが浮き出ていた。これはハズイ。日帰りトレランならOK、数日の縦走であればウール100%がいいかなと思う。

DRY WOOL T-SHIRT 2(UNISEX)
上質なウールと再生ポリエステルを交撚した糸を使用。ポリエステルの速乾性や耐久性とウールの肌触りを両立するTシャツです。 着用モデル:180cm Mサイズ、166...

コメント

タイトルとURLをコピーしました