手バネシャクリで真鯛を釣ろうの巻

釣り/FISHING
初めて体験してからかれこれ十数年経つが、とても奥が深く、魅力的な手バネシャクリによる真鯛釣り。いたってシンプルな釣りだが、難易度は非常に高い。その内容と魅力について記してみる。ご興味がある方は是非ともコメントをば。
文・写真:T.D.

手バネシャクリとは?

  一言で言ってしまえば、リール無しで行う釣り、すなわち、手釣りである。これは、日本古来から伝わる伝統釣法で、起源は諸説あるが、はるか昔(噂によると縄文時代から)に南紀あたりで始まり、全国に広まったといわれる。自分がテレビや雑誌が確認した情報だと、今現在でも、南は九州でも同様の釣法をしている漁師がいるらしい。関東圏だと、神奈川や千葉の内房外房で船宿があることにはあるが、両手で数えらえるほどの船宿しかない。いまや貴重な釣法だ。また、千葉の外房では似たような伝統釣法のビシマもある。この当たりの歴史については、後述する豊国丸の船長が詳しいので、実際に行かれた際に聞いてみると面白い。初めての参加だと、講義という名称で30分ほど、この釣りの歴史から釣法までをレクチャーしてくださる。特に南紀から伊豆、房総にかけて似た地名が多いのは(代表的なのは白浜とか妻良とか)、当時の漁師が釣りをしながら行き着いた先(伊豆や房総に)に住みつき、同じ地名が付いているという逸話?もあり、拝聴の価値がある。

 閑話休題、どういう釣りかという話に戻ろう。まず、タックルである。手バネと言われる竹やカーボンで作られた1.5m程度の竿に、ナイロンラージと言われるバーガンディ色の特殊なナイロン糸(8号くらい)が50ヒロ程度(1ヒロ1.5mなので、75m)ついており、その先に一旦、15号の中錘、そこから5号くらいの細いナイロンラージが3~4ヒロ、さらにフロロカーボンの2号くらいのハリスが付いて、2号の豆テンヤがつくという塩梅である。これをしゃくり上げては落としてステイの繰り返しで釣る。

活きエビがあれば、エサ持ちが良いので嬉しいが、近年、エビを獲る底網漁師が少なくなったことやその年、その年の海況によって年々手に入らなくなっている。
活きエビが無いときは冷凍エビになるが、釣果はさほど変わらない。ただ、エサ持ちは天と地ほどの差がある。。。

 さて、実釣法だが、まず、豆テンヤを可能な限り投げて投入する。そのあと、中錘を豆テンヤからできるだけ、離れた場所に投げる。この距離が重要である。というのも、テーリング防止や誘い時の動きにもろに影響が出るからだ。投げる向きはその時々で上げ潮、下げ潮に合わせて船長からアドバイスがあるのでそれに従うのが吉。船長いわく、ここで釣果が変わるという。投げ終えたらそこから指示ダナ(船長から何ヒロという指示がある)まで落とす。指示ダナまで落としてから少し待つ。ここですぐにシャクリ始めると、豆テンヤと中錘の距離が十分に離れていないがいためにテーリングを起こしてしまうので要注意。また、この「十分離れている」という感覚は軽くシャクった時の重みでなんとなくわかる程度なので、経験値が必要。慣れるまでは周りのベテラン釣り師の所作や船長のアドバイスで学ぶしかない。

この茶色ラインがラージナイロンである。確か10号だったはず。オレンジのマーカが4つ見えるがこれが40ヒロ(約60M)のサイン。5ヒロ起きにマーカーがあり、指示に合わせて都度微調整をする。ちなみにこれを竿先まで出すと60Mラインを探っていることになる。

 いざ、指示ダナまで届いたらシャクリ始める。自分が良く通う豊国丸(@竹岡)の場合は、高活性時は11秒間隔、低活性時は13秒間隔でシャクるように指示がある。これをその時々の状況に合わせて、時間間隔を変えたり角度を変えたり工夫しながら試行錯誤してその日の状況にアジャストさせていく。これを繰り返しているうちに当りが出てくる。なお、タナはあまり自分で変えない方がいい。明確に当りがある場合は、ステイの間にグッと引っ張れる感覚が手元まで届くが、それがわからない場合も多く、前述の一定間隔のシャクリが空合わせになり、しゃくり上げた瞬間に重さが一気に伝わることもある。

こんな感じでしゃくる。手首は絶対に返さない。

 この当たりがあれば、すぐさま竿先から垂れる糸を3回左右に大きく手繰り寄せる(文書が説明するのが困難なのでご容赦ください。バス釣りのボトムゲームで言う、電撃鬼アワセを手で3回かますというイメージ。笑)。これが決まると大抵フッキングできているのだが、この三回の合わせが非常に難しい。慣れるまでは、非常にどころか意味がわからないくらい難しい。まず、シャクリを顔の横にすっと引き上げてくるようなシャクリでないと垂れている(魚に引っ張られている)糸に手が届かず、前述の3回電撃鬼アワセが成立しない。うまく手繰り寄せられずにもたついているうちにフックアウトとなる。いやいやいや、そんなの簡単でしょって思ったそこのありがたき愛すべき暇な読者の皆様(たぶん、仲間内しか読んでいないよね)。魚がテンヤを加えた状態で水圧がかかっていると、顔の横にすっと持ってくるのがとんでもなく難しい。是非ともご経験いただきたい。ということで、これが手バネシャクリという釣法の超重要テクニック(テクニックというより必要動作)である。

 さらに大物がかかってしまって竿が耐えられないときは、尻手ロープというものを接続して(延長ロープと解釈してもらえれば大丈夫です)、一旦、竿を海に入れて、その延長ロープで駆け引きをするのだが、これをつけるのがまた、難しい。ここでもたついていると今度はラインブレイクが起こりやすい。自分もこのもたつきで何度も大物をばらしている。。。つまるところ、「ドラグ=自分の手で糸を引っ張ったり出したりする」のがこの釣りなのでドラグをガン締めしてファイトをしている状況を想像してもらえれば分かりやすいでしょう。特に浅場の型物は想像以上に引くので、5kgくらいのが釣れたと思ったら3kgくらいなんてこともザラである。

この左側の青いバケツに手繰り寄せたラインを入れていく。常に微量の水が垂れていてこの水のおかげで糸絡みがしないような仕組みになっている(原理は不詳だが、なぜか糸絡みがしない)。白い丸円柱状の発泡スチロールにピンクのタコ糸が巻いてあるのが尻手ロープ。

 さて、こんな感じで魚がかかった状態になったら魚の引っ張る力を自分の手で調整しながら徐々に手繰り寄せるのだが、ここからはひたすら緊張状態である。とはいえ、これがこの釣りの最大の醍醐味でもあるので、存分にこのスリリングさを味わいたい。リール+ロッドであれば、勝手にドラグや竿のしなりでラインテンションを調整をしてくれるが、これはあくまで自分の手である。弱すぎれば、魚の思うままだし、強すぎてもフックアウトやブレイクに繋がる。魚のダイレクトな動きを自分の手で感じながら駆け引きをする。時には強引さも必要だが、時には繊細さも必要になる。この微妙な塩梅を自分で調整しながら手繰り寄せ、魚を手にした時の喜びは、ひとしおである。リールやロッドでは味わえない、達成感と喜びがある。普段、釣りに慣れ親しんでいる人にこそ味わってほしい釣法だ。

2025年の春先に出た3.1kgの良型真鯛

どこでできるの?豊国丸編

 さて、こんなテバネシャクリだが、自分は千葉は竹岡にある豊国丸( https://www.toyokunimaru.jp/ )という船宿を利用させてもらっている。その道60年以上の名物船長がおり(慣れるまでは、令和のご時世ではなかなか味わうことのできない愛のあるアドバイスをビシビシを受けることができます。怒っているわけではなく、釣らせてくれようという愛なので前向けに受け止めましょう。笑)、自分はかれこれ10年以上通っている。館山道の竹岡ICから5分程度の場所にあり、駐車場は無料で12台くらい停められる。

これが船宿。駐車場はここからこの宿のはす向かいのスペース。船までは徒歩1分くらい。

 豊国丸の船長の腕は言わずもがななのだが、そのほかにも良いところがあるので、何点か記しておく。まず、手ぶらでいけることである。ライフジャケットの貸し出し(無料)はもちろん、エサや氷、貸し竿(テバネシャクリのみ)も無料である。また、魚をいれるクーラーも船で用意してある大型のものがあるので、釣れた魚は沖上がりまで生け簀にいれておき、最後に〆てクーラーにまとめて入れてくれる(自分が釣った魚が分かるように色付きの針金をもらうのでそれを魚に括り付けて他の乗船者の魚と混同しないようにできる)。ちなみに息子さんがいる時は、息子さんが手際よく、〆てくれるのだが、不在時は乗船者の中で若い人間がやらされる。ベテランが群雄割拠するこの船において、アラフォーの自分はありがたいとこに若い人間枠なので、帰港中の20~30分間で何十匹という魚を〆めることになり、港についたころには手も服も血みどろになっている。若い人が参加する場合、ここだけは覚悟したほうがいい。自分より若そうな子がいたらその子を遠慮なく船長に差し出すので、そういう嫌な人間がいたら僕だと思ってください(笑)。あと、前述の通り、生き餌がないこともあるので、〆エキスがあるといいかもしれない。

これが例のクーラー。帰港後は船宿の前で全員の釣果をし写真に収める。船長が釣った魚は乗船者に分配してくれるので、思わぬ高級魚がお土産になることも多々ある。

 ちなみに土日は乗合のみ(大体8名まで)で、仕立て希望の場合は僚船での出船となる。逆に平日は仕立てのみとなる。予約は電話のみ。かわいらしい女将さんがカレンダーを確認しながら空きを教えてくれる。出船時間は季節毎に違うので要チェック。漁協のレギュレーションで14時くらいが沖上がり。なお、冒頭で述べた「講義」を希望する場合や初めての参加の場合は、その旨を電話で伝えておくと良い。「講義」の実施有無や座る場所を配慮してくれる(基本、船長の隣になります笑)。

 新しい釣りをしてみたい!単に手バネをやってみたい!東京湾の江戸前の真鯛を食べたい!理由はそれぞれなんでも良いので、是非とも味わってほしい手バネシャクリ。これからのハイシーズン、一度、経験してみるのはいかがであろうか?

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