鹿児島にいきもんそ〜
伊豆大島のバイクパッキングを終えはや半年、OMM BIKEにも落選し虚無感に苛まれていた市ヶ尾GRAVEL BIKE 同好会の面々。
そろそろ遠征に行かないと、体が震えが止まらなくなるだろう。
そこで、以前から私の中で構想のあった錦江湾ライド&開聞岳アタックの計画をTD氏に持ちかける。すると、
「ちょうど鹿児島のバイクパッキング行こうと思ってたところですわ。いつにする?」
と、前のめりどころか先を行く回答が返ってくる。
同好会メンバーのIG氏も強制参加ですぐに決行が決まった。
バイクパッキングの計画はまだ不慣れなところがあるものの、地図と睨めっこしながらざっくり以下の計画を立ててみる。
初日は鹿児島空港から開聞岳の麓キャンプ場まで自転車で約90km移動。
翌日は開聞岳で朝陽を見たのち、前々から訪れたかった知覧特攻平和会館に立ち寄り鹿児島中央で宿泊。
最終日は鹿児島中央や桜島をぶらりとライドしたのち、東京に帰る2泊3日の旅だ。
ざっくりとした計画を携え、いざ鹿児島へ向かった。
※googlemapの自転車での移動時間は、ツールドフランス経験者の脚力を元に算出していると思われるため、参考にしないこととしている
<備忘>
今回のバイクパッキングに挑むにあたり、バイク用バックをMYOGする計画を立てていた。急ピッチで製作したためフレームバック、ステムバック、ハンドルバーバックのみとなってしまったが、なんとかバイクパッキングに耐えうるレベルのものが無事完成。MYOGの詳細につては別途まとめることとする。
トラブル勃発
朝5:30の羽田空港でパッキング。
タイムリミットがあると緊張感が出る、事前練習のおかげもあり伊豆大島よりも早くパッキングを終える。ひとまず第一関門であるチェックインはまで完了。
輪行袋はフェアウェザーのウルトラライト輪行袋を使用。surlyのkarate monkey Mサイズであれば、ハンドルと両輪を外すことで問題なく収納可能。
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ちなみに自転車輪行の飛行機手荷物事情だが、国内線であれば、ハンドルと前後輪を外して輪行袋に入れれば、手荷物として預けることは可能。自転車の3辺(縦・横・高さ)の合計が230cm以内であれば問題ないが、超える場合は予約センターに確認が必要のようだ。あと、チューブレスの場合はシーラントも飛行機持ち込み不可のため要注意。さらに飛行機では横に寝かせるため、ディレイラー部分が下向きにならない要注意!

輪行袋を担いでウロウロ歩いていると、困っていそうな我々を見て空港で装飾作業をしていたお姉さんが声をかけてくれる。
「もしかして、自転車の組み立てですか?」
「あ、あ、はい、そうなんです。」と突然の優しさにキョドる。
「自動ドアを出て、左にまっすぐ進んだところにcycle stationがあるのでぜひ使ってください!楽しんでくださいね〜」と神対応。
優しい。。。
困っている人を助けたというお姉さんにとっては当たり前の行いなのかもしれないが、都会の喧騒に疲れた我々には優しさが染みた。。

パッキングが終わったのは11:30、既に予定より1時間遅れている。時間はあまり厳密に決めていなかったものの、ゆっくりし過ぎてしまった。やはり適度なプレッシャーは必要なようだ。
鹿児島空港からは国道56号線を通って錦江湾奥の加治木町まで一気に下っていく。道は走りやすく森に囲まれた道、この爽快感は半端じゃない。
気持ち良く走り抜けていたが、ふと
「、、、まさか、帰りはこの坂を登るのか?」
と考えてはいけないことが頭をよぎる。そしてその考えはそっと心の奥に閉まった。
帰りのことは、帰りに考えた方が良い。

加治木町まで下ると、錦江湾とど迫力の桜島が迎えてくれる。
桜島はとても好きな山で、荒々しい山容、錦江湾を挟みそびえるシンボリックな姿、地球が呼吸するかのように吹き上げる噴煙の勇ましさ、個人的百名山の一つである。

軽快に錦江湾沿いを進んでいたところ、徐々に皆の車体にトラブルが発生し始める。。
TD氏、ディスクブレーキで異音発生中。
IG氏、ブレーキ付近に違和感あり。
私は、ギア変更時の異音、切替不調。
車体の不調を抱えたまま走り続けることほど不安なことはない。
健康診断でD判定が出たまま、日常生活を送るような気持ち悪さがある。
鹿児島市内に入り、私たちは鹿児島に鎮座する病院(BLUE LUG鹿児島)を目指すことにした。
救世主”BLUE LUG鹿児島”
BLUE LUG鹿児島は、JR鹿児島駅からすぐの桜島行きの船が出る港の近くにある。
目の前に桜島がドーンと構えており、鹿児島中央ほど混み合っておらず鹿児島港と海が見えて開放感がある。なんだか気持ちが良い場所だ。


BLUE LUGになんとか到着できてまずは一安心。
各々がバイクの不調を伝える。前日に自転車で転倒しあばらを痛めていたというスタッフのアゼさん、自転車を少し触りだいたいの症状を把握し、次々と解決していく。さすがプロ、マジで医者。
天井が高く巨大なガレージのような作り、開放感があり思わず長居してしまったが修理していただいているのを見ていてとても楽しかった。飛行機のバイクパッキングに行く際は近くの自転車屋を抑えておくのも重要ですね。
シーラントは飛行機に乗せられないのでBLUE LUGで購入しておく。

鹿児島駅のモンベルでOD缶を調達し万事OK。
だがしかしこの時点で15時。
「これ、開聞岳に行くの無理じゃね?」
と不穏な空気が流れる。
「、、、いや、まだ間に合う!」
とりあえず無心で国道225号線~226号線の産業道路をひたすら爆走する。BLUE LUGのアゼさんが、喜入を過ぎたあたりからは道が細くなり、一気に暗くなる。トラックもスピードを出してるので気をつけた方が良いとアドバイスをくれた。
まずは暗くなる前に指宿を目指すことにした。

日が暮れ始め道の駅指宿についたところで18:30、足の疲労も蓄積されており、今日中に開聞岳には間に合わないことが確定したのだった。

ここは潔く、指宿周辺で宿泊場所を探すこととし、当日に予約が取れた「指宿エコキャンプ村」を目的地に切り替えることとする。
途中で計画が変わるのも、旅感があり嫌いじゃない。ガチガチに立てた計画通り旅を進めるより、臨機応変に計画を変えながら目的地を目指す方が性に合っている。
ということで、今日は指宿で泊まり翌日の朝に開聞岳まで行き、登頂。知覧は諦め鹿児島中央に返るプランに変更した。

キャンプ場の管理は300mほど離れた場所にある「休暇村指宿」が行っており、砂風呂や温泉もついている。一般財団法人休暇村協会が運営しているだけあって、安い。
そして休暇村指宿には薪も売っていた。早速購入したいところだが、花粉にまみれた疲れた体を癒したいので、まずは風呂に入りたい我々もいた。
すると、
「薪は皆さんが風呂から出る30分後ぐらいに、キャンプ場の皆さんのサイトの前に届けておきますね!」
と、まさかの薪デリバリーサービスを提案してくれる。鹿児島は優しい人ばかりだ、、、薪をキャンプサイトまで運んでくれるなんて聞いたことがない。
感謝を告げ、早速待ち望んでいた温泉に入る。
休暇村指宿の日帰り温泉の泉質は「ナトリウム塩化物温泉」でかなり強力かつ濃厚、皮膚が弱い僕には少し刺激が強くて長湯できなかったが、肌がスベスベになり効能は感じるし、暖かいお湯につかると疲れは一気に回復する。
風呂に入りながら、なぜ予定どおり進めなかったのかを振り返ってみる。
今回の旅には3つ地獄があった。
①花粉地獄
②ブロックタイヤ地獄
③タバコ休憩地獄
今後はこの三つの地獄を脱しなければならないと考える。
まず一つ目は花粉地獄。
3月初旬は花粉の全盛期、更に重度のアレルギー鼻炎を持つ私にとって、花粉が乗った風を全面に受ける自転車旅には向いていない時期だということが判明した。花粉を吸いこみすぎたせいで目と鼻が使い物にならなくなっていた。時期は見直す必要があるだろう。
二つ目はブロックタイヤ地獄である。
これが1番の問題かもしれない。今回私は27.5×2.6のブロックタイヤを使っていたが、ロード中心の長距離ライドには全く適しておらず、とにかくスピードが出ない。2.3以下、可能であれば29インチにも変更しておきたいところ。
三つ目は脱する事ができない。
半分冗談だが、今後はI.G氏のタバコ休憩を計画に入れなければならない。
そんなことを考えながら、
明日の開門アタックに向け就寝する。


ATTACK TO THE KAIMON
焚き火をしながら天気予報を確認する。覚悟はしていたが、改めて直前で天気を見て絶望する。

通常の気温より10℃は低いし、雪が降るなんて聞いてない。
これはさすがに登れないか、本土の最果てまで撤退か。。。?
葛藤を抱えながら、まずは開聞岳の麓まで自転車を進めることとする。
指宿を過ぎ、池田湖を巻いて226号線で山を越え開門へ向かう。
269号線と226号線が交差する国立病院前交差点、ここから開門方面へ抜ける坂が強烈だ。
非常に長い坂を漕ぎ切り安心したのもつかの間、第二、第三の坂が押し寄せてくる。第三の坂の急な直線を登り終え、ようやく終わりかと思ったら、カーブを曲がったその先に更に急坂が待っていた。先の見えない不安、畳み掛けられる恐怖、こうして心は折られていくのだ、、、

なんて思っていたら、いつのまにか峠を越えていた。いよいよ開門が見えてくる。
山頂が雲に覆われる開門岳は924m、1,000mに満たないもののラスボス感がある。

開門駅の山頂に分厚い雲がかかっているもののどうやら雪は降っておらず小雨、今後回復見込みでもあるので山頂アタックを決行することとした。
バイクパッキングではお馴染みのULA BURSTを、開門アタックにも使用。自転車にも登山にも使える超万能バック、以下の記事で紹介を書いてます。
最近ではtakako mountain bookやCAYL、LITEWAYなども使いやすそうなウェストバックを出しているので要チェックや。


なんやかんやで市役所を出たのが14時。開聞岳のCTは約5時間、これはやばい。既に自転車で鹿児島中央に帰る気力はなく、枕崎線の最終時刻19時30分に照準を合わせていた。ここから開聞岳のタイムアタックが始まった。
I.G氏は初めての登山であった。
初めてが雨の中の開聞岳とは、なかなか貴重な体験である。彼は生まれながらに恵まれた筋肉と身体能力を持つ男で、私が今までの登山で積み上げてきた体力や経験を総動員し、帰りの電車に間に合うようCT4時間での下山を目指したが、初登山にも関わらずしっかりと後ろにつけているI.G氏。




スタートから2時間、眺望は一切ないまま山頂に到着した。本来であれば屋久島、種子島、以前釣り旅行に訪れた佐多岬を見ながらご来光を拝む予定だったが、真逆の景色。
ただI.G氏はこの過酷な状況も楽しんでくれたようだった。
一つも予定通りに進まなかった鹿児島バイクパッキングの旅は、これにて終了した。

エピローグ
開聞岳のタイムアタックを終え全てをやり遂げだ我々は、自転車をたたみ枕崎線で鹿児島中央へ向かった。元々の計画の半分の工程で終わってしまったことへの反省点は多いが、達成感は十分にあった。
最果ての地まで鉄道が通っている安心感、日本の鉄道インフラの精到さには頭が上がらない。
開門から2時間かけて鹿児島中央に到着、実はBLUE LUGで天文館のおすすめ町中華をあらかじめ聞いていたので、既に23時だかながづきという店に入る。渋くて最高の雰囲気の中、鹿児島の旅を締め括ったのだった。





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