日本で唯一の砂漠は東京都の「伊豆大島」にあった。
見渡す限り黒い砂で覆われた「裏砂漠」でのオフロードライドが非常に興味深い体験だったので、記録に残していく。 <文/写真:Yuki Fujimura>
そもそも「砂漠」って何なのか
「砂漠」とは何なのか、と聞かれると確かに説明できない。
なんとなく中東にある砂地を想像するが、具体的な定義はあるのだろうか。そこで「砂漠」の定義についてChatGPTに聞いてみた。
「年間の降水量が極めて少なく、植物がほとんど生育しない乾燥地帯を指します。一般的に、年間降水量が250mm以下の地域が砂漠とされますが、乾燥していることが最大の特徴です。」
とのこと。
日本では「鳥取砂丘」を真っ先に思いついたが、「鳥取砂丘」はあくまで「砂丘」(風で砂が運ばれてできた丘)であり、砂漠ではないらしい。
では日本に砂漠は無いのか。
いや、日本唯一の砂漠は伊豆大島にあった!!そして、その砂漠は自転車でオフロードライドができた。
これは非常に興味深いということで、2024年5月某日にリサーチ部隊(T.D氏、I.G氏)とともに伊豆大島へ向かうことにした。
ジェット船で「伊豆大島」
伊豆大島には、神奈川の久里浜からジェット船が出ている。
ジェット船の所要時間は1時間、時間が少ないサラリーマンにはこのアクセスの良さは非常に助かる。ちなみに大型船だと所要時間は6時間、これも旅感があり楽しそうなので今度リサーチしよう。
3台の自転車を車に乗せて、私の住む藤沢から湘南の海沿いを走り久里浜に向かう。由比ヶ浜ではサーファー達が波に乗ったり、犬と散歩をしたり過ごしている。湘南の朝はとにかく気持ち良い。
藤沢から車で1時間ほどで久里浜に到着。
久里浜港は東京湾の入り口にある三浦半島の港で、ジェット船では伊豆大島の他、新島、神津島にもアクセスできる。(東海汽船のホームページを参照)
出船時間から余裕をもって到着したものの、初のマウンテンバイク輪行にだいぶ苦戦。10年ほど前に購入したモンベルのロードバイク用輪行バックを使用したが、前後輪外してもハンドルが収まらなかった。今後のためにも、マウンテンバイク用に輪行袋を買い替えたほうが良さそうだ。T.D氏がmont-bellの「UL輪行バッグL」を使用していたが、SurlyのKrampusサイズLが前輪を外すだけで入っていたので調子が良さそうだった。
一方私は、トライアンドエラーを繰り返し30分以上の時間をかけ、なんとか輪行を終えた。
BlueLugの「輪行袋はや詰め対決」動画をYoutubeで再三にわたり見てイメトレしていたが、現実は思う通りにはいかないもので、、動画で見るより何事も実際に体験することの重要性を改めて痛感した。既にしっかりとした疲労感を感じながら、満員のジェット船に乗り込み伊豆大島へ向かったのだった。
まさかの「岡田港」着
ジェット船に揺られること約1時間、大島が見えてきた。
ただ、地図アプリで現在地を見ると北側の小さな港に向かっているように見える。
というのも大島で船が発着する港は2カ所あり、ひとつは島の西側にあり最大の港である「元町港(もとまちこう)」で、もうひとつは島の北側にある「岡田港(おかたこう)」だ。岡田港から元町港までの距離は約7kmあり、元町港の先に今日の目的地である「トウシキキャンプ場」がある。つまり純粋に走行距離が7Km延びる。
てっきり大きい港である元町港に着くものと思っていたが、船はゆっくりと北側の岡田港へ到着した。
おや?
眠くて状況もあまり理解できていないが、岡田港に到着し、伊豆大島行きの搭乗者は降りるようにアナウンスされている。
………まぁいっか。7Kmだし。
その時はあまり重要視していなかったが、この7Kmの追加距離+勾配約100mが後にボディブローのように効いてくることになる。
ちなみに、発着する港はその日の風や海のうねり等の状況により決めらるようで、当日の早朝7:00に港が決定するとのこと。
ちなみに、私の自転車とパッキングは以下のとおり。
・自転車:Surly KarateMoneky(サイズM)
・サドルバッグ:BxB “Pìccolo”
・フロントバッグ:BlueLug “137tote(x-pac)” with WALD137basket
・フレームバッグ:Revelate Designs “Tangle Frame Bag-S”
・ウェストバッグ:ULA Equipment “Burst”
サドルバッグサポートはキャラダイスのバッグマンQRスポーツを使っている。
シートポスト(Thomson)とサドル(WTB)の間に金具を入れ込んで装着するが、金具とシートポストの接地面がかなりタイトで苦戦。結果、サドルの角度が少し上振れし、股間に軽いダメージを受ける結果となった。ただ、ウェストバッグとサドルバッグを使うことでザックを背負うストレスから解放され、非常に調子良く走行することができた。
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至高の野営場「トウシキ」
元町港に到着したときは強烈な暑さとアップダウンでかなり疲弊し、体力ゲージは既に残り50%になっていた。
とにかく腹が減った、、、
元町港は大島最大の港で食事処、カフェ、スーパーマーケットなど一通りのお店を揃えていたが、暑さと疲労で探索する気力もなく、吸い込まれるように目の前にあったホルモン焼き屋「十十」にinする。
テレビから王様のブランチの音がうっすら聞こえる、「おばあちゃんの家」を彷彿させる雰囲気が落ち着く、さらにはメニューも充実、そしてスタミナ焼きは自分で味付けを楽しむスタイル。島の空気をしっかりと感じました。
疲れた体には少々”薄味”なスタミナ焼きを堪能したところで次の目的地であるトウシキ野営場を目指すわけだが、元町港からの距離は13キロ。そこまで長くはなく「イケる!」と思わせる距離ではあるが、いざ走り始めると細かいアップダウンが多く、乳酸に着々とダメージを与えてくる。
大量ゲージがジリジリと減っていく。
そして野増の町を抜けると、急に縞模様の一際目を引く地層があらわれた。これは「地層大切面」といい、繰り返される火山活動により堆積した火山灰により幾つもの層ができているようだ。右に海、左に地層、絶好の小休止スポットだったが、先頭を行くT.D氏は狂ったようにペダルを漕ぎ続けていた。
仕方なくI.G氏と私も休憩せずに追随することにした。
体力ゲージ残り20%の状態で、トウシキ野営場についに到着。
着いた瞬間にそのクオリティの高さに目を疑った。一面にキレイに生え揃った芝生、整備された炊事場やトイレに、シャワーまでついている。しかもところどころテーブルがあり、荷物が限られるBIKE PACKINGには超助かる仕様。しかも無料。
これが”TOUSHIKI”…
トウシキ野営場の気分が良すぎて完全にチル状態。
隣で小さな松の木の下にテントを張り、同じくチル状態の外国人にも挨拶。オーストラリア大使館に勤めているらしく、自転車を褒められた。単純に嬉しい。夜は島で知り合った人と寿司を食べに行くらしく、最高の休日を過ごしていた。
我々はとりあえず「薪」と「食料」の買い出しに向かった。
一通り物資調達も終わったところで、今後の計画について改めて考える。
明日にかけて天気は若干の下り坂、裏砂漠までは標高約400mUP、距離は片道約9km、現時刻は15:30、体力ゲージは残り20%。これらの要素を踏まえて最適なプランニングが求められた。我々は、現在置かれている状況を十分に加味し、以下三つのプランを検討した。
プランA:この後、速やかに裏砂漠へ向かう
プランB:翌日の早朝に裏砂漠へ向かう
プランC:とりあえずビールを飲む
迷いなく、体が「プランC」を選択していた。
「プランC」からの「プランB」への移行、これが伊豆大島を堪能する最適解だった。ということで裏砂漠へのチャレンジは翌日の早朝に持ち越すこととなった。
「裏砂漠」の探索
翌朝4:00に起床。
前日に飲んだ伊豆の地酒の余韻を胃の中に感じる。
幸いにも下り坂模様であった天気は裏砂漠までは耐えてくれそうな予感、急いで本旅の最終目的地である「裏砂漠」へ急いで向かう。
裏砂漠の入り口まではgooglemapだと約1時間、ただgooglemapの自転車コースタイムは超人の脚力が想定されているため、実際は1時間半程度かかるだろう。
裏砂漠は「月と砂漠ライン」を過ぎた避難シェルターの横に入り口があり、そこからひたすら砂地を登る。
自転車で登れる終着点についてからは、目の前にそびえる三原山を目指し登ってみることにした。YAMAPは裏砂漠からのコースもちゃんと示されているのでありがたい。
展望台まで登り終えると、台地が広がり奥には三原山が見えた。
さぁ登ろうか~と意気込んでいたところ、丁度出航する港が決まる7時となった。念のため役場に電話をかけて確認すると、淡々と「岡田港」に決定したことが告げられた。
「岡田港」。。。またあの7kmを走るのか。
時間・残体力、全てが足りていない我々は、三原山を諦め下山することを決めたのだった。
いよいよ、本旅のメインである裏砂漠の下山に入る。
轍はしっかりと固められていて漕ぎやすいが、道を逸れると一気に砂にハンドルを取られるし、溝や凹凸があったり、楽しい要素しかない。
大島土産は明日葉や磯海苔など充実。満足行く旅の思い出とともにジェット船で帰路についた。
伊豆大島ライドはアップダウンが多く想像よりキツかったが、気持ちよさは折り紙付き。そして裏砂漠のオフロードは楽しすぎるアドベンチャー。
きついけど毎年訪れたい、そう思わせる伊豆大島旅でした。
終わり
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